特撮作品でのキカイダー

善と悪という判断を

現代社会、特に現在の労働という現場にもよくこうした矛盾が見られる。一方では正しい行為と是とし、一方では間違った行為だと否とする、もっといえば犯罪行為をしているかだ。通常の犯罪者であれば自分のしたことは間違っていると後の祭りになってから後悔するもの、ですが自身の行為を完全に是として間違っていないと断定する人も中にはいます。相模原の福祉施設で起きたおよそ50名近くの職員ならびに入所者を殺傷させた犯人がわかり易い例だ。取り調べにおいて自分のしたことは間違っていないと確固たる自信を持ち、あまつさえ自分のしたことは罰せられないといったことも述べているという。どこにその根拠があるのかはさておき、通常と異常という天秤に分けられて前者ではなく後者に重りとして乗せられては、もうどうしようもないのが本音だ。

だからこそ法という縛りによって厳罰を与えなくてはならない、ただそれを完璧に行う事が出来ないのも日本が定めている法の限界だともよく言われています。普段の私達からすれば、犯人は精神をこじらせた病人だからと判断しますが、もし仮にこれをロボットに判断を委ねるとしたらどうだろうか。もしキカイダーのような心を持たない武装したロボットが異常な犯人を見つけた場合、プログラムされた通りに犯人を制圧するでしょう。一切の情けもなく、それこそ展開によっては犯罪者を殺したとしても問題ないというくらいに。けれどそれではダメだと日本社会では言われています。

正直、犯罪を犯したとしても人権があるのだからある程度恩赦を与えなくてはならない、という日本の法システムは実に難解だ。キカイダーにとってはそんな人間の感情に見られる機微に対して理解をしなくてはいけないからこそ、善と悪というものの違いと理解に追われるのです。それをまざまざと表現しているのが1970年代に放送された特撮作品で見られます。

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最後までヒーローとして活躍するも

キカイダーという作品が放送され、そのスタイルは一貫して『正義の味方』という存在を徹底されている。どんなに悩んでも最後はキカイダーの中にある正義こそが真実だとする展開もあったことから、正しいことはどのような場面においても正しいという普遍性を示した。現実でも正しいことをするのが善行ではありますが、ただ時に間違ったことをしなければならない場面もあります。それが人間の難しさであり、働くという労働で見られる矛盾点でしょう。そう思えば利益的な搾取を目的に行われる詐欺や横領と言った犯罪が減らないのも頷けます。

世間一般で正義とみられる心は理解しているが、彼らにとってお金を稼ぐことこそが正義とする考え方だ。弱者から搾り取れるまで絞りとればいいとする考え方は正しくはない、ただ間違っていてもやらなければならない人、もしくは反社会的な行為だと理解していない人もいます。正しいことをしているだけと思っている人の心理こそ、実は恐ろしい物はない。それが人間関係において悪影響をもたらす要因にもなる。

言ってしまえばキカイダーもまたそんな人間の難しさに直面するからこそ、あんな最後になったのかもしれません。

ロボット最高!

最終的な結末として

キカイダーの最後、彼は自身の兄弟とも言える存在と戦う事になり、ヒロインと弟、そしてその博士とともに日本から脱出しようと見られましたが、その選択を取ることはありませんでした。彼が選んだものは『善と悪の間で苦しみながらも、正義の味方になる』というもの。不完全な良心回路、完成されることのないアンバランスな心と共に1人戦い続けるという選択肢を選び、ヒロインたちとの決別という結末を迎えたため、悲劇的な最後となった。

これも言ってしまえばキカイダーが自分で苦悩して考えたが故の結果であり、誰にもそれを否定することが出来ない。ロボットに心を持たせるということ、それは自分という個が選ぶ答えを導くが故、人間とは異なる動きをするかも知れないという恐れにも繋がります。だからこそか、現代社会を舞台にしたリメイク版にはその危うさを説く動きにも妙な背景が感じられる。

放送当初

今作は非常に人気が高く、ゴールデンタイムの番組として平均16%以上の視聴率を獲得した。当時なら別段驚く話でもありませんが、これがあのドリフターズの番組の裏でやっていたとしたらどう見るか。当時お化け番組とまで言われた作品の裏でキカイダーの健闘は実に褒められたものです。ただその活躍に反して業界内外、並びに視聴者から苦情も寄せられたという。

キカイダーのデザイン

まず一番に問題視されたのが、キカイダーの見た目だ。青と赤のコントラストな外見に、内部の脳とも言える部分が透けて見えるというデザインには、どこか気味の悪さを感じられます。原作者である石ノ森先生にすれば過去に類を見ない最高の出来だと称していますが、肯定する意見は当時は少なかったとのこと。気持ち悪い、とても正義の見方ではないといった意見もあったほどだ。ただ人間の善を意味する青、人間の悪を指す赤という対比があったからこそ作品のクオリティを高められたと考えると必要な要素だったといえるでしょう。

ピノッキオを下地として

有名な話としてキカイダーはイタリア童話でも有名な『ピノッキオ』をモチーフとしている。物語においてキカイダーが最終的に人間を目指そうとする流れになりますが、最終的にそうなりたくないと考えるまでに至るのも、彼なりの答えだ。ピノッキオは最終的に人間になることを喜びますが、キカイダーの場合はそれを良しとしなかった。善悪という狭間に苛まれたからこそ、彼には完全なロボットにもなりたくないと考えならながらも人間になろうという決断にも至らなかったのではないでしょうか。

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